もっと優しくなれればいいのに…と思っているが実践できない僕は心の狭い男だ。 こありに冷たくしてしまった。バイト不採用の知らせを聞いて、携帯を放り投げ、 あてもなく台所に行くと、こありが幸せそうな顔で砂糖をなめてたからだ。 口の周りに砂糖をべったりとつけ照れ笑いをするこありに、嫌味を言ってしまった。 「こありはいい気なものだね。砂糖をなめてれば幸せなんだから」 こありは唖然とした顔をしたあと、頬をぷうぅと膨らまし 「にぁっ!そんな事言うおにーさんは、こありキライです! もぅご飯も作ってあげませんです!」 と言って押入に閉じこもってしまった。自分が悪いのは知っていたが、謝る気にはなれず外に出た。 切らしているわけでもないタバコを自販機で買う時、ふと思った。 僕自身は、夕飯を食べる気分じゃないから別に良かった。だが、こありの性格からして、自分も飯抜きなんだろうな…と 家に帰ると、良い香りが漂い、テーブルの上にカレーライスと広告の裏の書き置きが一枚。 「これはこありがつくったものではないのです。かってにおいてあるのです。」 憶えたての崩れたひらがなで書いてある。こありの字。押入のふすまが開いていてこありがこっそりと覗いてる…つもりなのだろう。 …そうか、僕は蟻よりも心が狭かったのか… 「あー!誰が作ったのか分からないカレーライスかぁ!じゃあ食べちゃおーっと!」 とわざとらしく僕が言うと、ふすまの向こうで「やったです!」という小さな声。 −完全に僕の負けだ。これ以上意地になっても勝てそうにない。多分こありは人を幸せにする魔法使いなんだろう、とにべもなく思った。 「出ておいで、こあり。非道い事を言ってゴメン、僕が悪かった。一緒にカレーを食べよう」 こありが恐る恐るふすまから顔を覗かせる、僕は嫌と言うほど小蟻の頭を撫でてやろうと思った。 明日はショートケーキでも買ってきてあげようか。いや、一緒に買いに行こう−