こありを拾ってから一週間ほど経ったある日、僕はこありに訪ねた。 「どうしてこありは冬なのに出歩いていたんだい?」 「にぁ〜、こあり、女王蟻になるためです!」 満面の笑顔で答えるこあり、対照的に表情が消える僕… 「おにーさん!こあり、頑張るです!」 こありは知らないのだ。決して自分が女王蟻になれない事を。それどころかこの冬を越せるかさえ… 僕はくしゃくしゃとこありの髪をかくように撫で、笑顔だけで答えた。僕は卑怯者だった。 その夜、なかなか寝付けない僕の隣に背を向けて寝ているこありが囁いた 「おにーさん…もう寝ちゃいました…?  本当はこあり、知ってるです…女王蟻には初めからなれないって…でも…  こあり、夢を捨てたくないです…たとえ次の夏を迎えられなくても  大好きなおにーさんには元気なこありを憶えていて欲しいです…」 僕は声を出さずに泣いた。